International Roses and Garden Show 2008 / 第10回国際バラとガーデニングショウ2008
主催者側シンボルガーデン:五感で楽しむクラシックローズ・ガーデン
レイアウトデザイン:Peter Beales/ピーター・ビールズ
植栽デザイン、施工、管理:Mark Chapman/マーク・チャップマン
Concept:英国バラ育種家のピーター・ビールズ氏デザインのシンボルガーデン、「五感で楽しむクラシックローズガーデン」。
「バラの神様」ピーター・ビールズ氏とは
第10回記念大会で担当したシンボルガーデンは、例年より一回り大きなサイズ、ボリュームのあるガーデンでした。
「バラの神様」と称される英国のバラ育種家、ピーター・ビールズ氏は貴重なオールドローズの保存、維持に努め、彼自身新品種の作出も行い、数多くのバラを世に導きました。
2003 年~ 2005 年まで英国王立バラ協会会長を務め、2003 年にはバラの育種における功績に対して、英国王立園芸協会より英国園芸界最高の栄誉となるVMH〔ヴィクトリアン栄誉勲章〕を受章されました。尚、 2005 年には大英帝国勲章MBE も受章されました。
そんな彼と英国時代から友人である弊社代表デザイナーのマーク・チャップマンが、ピーター氏デザインの「五感で楽しむクラシックローズガーデン」の施工、植栽と管理を担当させていただきました。尚、主要なエレメント(フェンス、オーナメント、鉢、ベンチ等)やバラ、樹木、シュラブ、宿根草などの植物の選出はマークに託されました。
オールドローズとは1867年に作出された初のハイブリッド ティー種である「ラ・フランス」以前のバラを総称して指しますが、学術的に明確な定義があるわけではありません。 数々のオールドローズを一度に目にできるのは、この時しかなかったであろう程の贅沢な空間です。
静かで繊細なピーター氏らしく、バラに対しても心のこもった親切な態度で育種・栽培する姿が見られました。植物への深いリスペクトを感じる姿勢です。
右上:マクミラン・ナース
右下:ブルーフォーユー
右上はピーター・ビールズ氏作出のバラ[マクミラン・ナース]ですが、チャリティー精神にも溢れていたピーターはこのバラの収益金の一部をMacmillan Cancer Support(マクミラン癌支援財団)に寄付しています。
今でこそ、日本にもホスピスやマギーズセンターという言葉が浸透して来ましたが、チャリティー先進国イギリスから、園芸業界に携わるピーター氏やマークが日本では当時知られていない活動を、バラやガーデンショウを通じて、日本の皆さまへご紹介できる良い機会にもなりました。
ピーター・ビールズ氏はバラの育種家なので、バラをメインに魅せたい方です。一方マークは造園家であり、自身もバラだけではない植物全般を育てるのが大好きなガーデンデザイナーです。その彼が紹介するガーデンは、バラに添える植物やバラよりも存在感を発揮する植物を如何にガーデン内で配置するかを考えます。そのため、ガーデンがいかに楽しい存在となるのか、どんなガーデンがクライアントの求めている空間なのかを考えるため、ピーター氏とは少し違った視点でガーデンを考えます。バラの専門家が作る庭と、ガーデン全体を考えるデザイナーの違いとも言えます。
こちらの場所、実は開催地の西武球場(ドーム)のマウンドです。
マウンドは野球にとって神聖で、決して選手以外の人が踏み入れてはいけない場所との事でした。そのため回遊式計画だった今回のショウガーデンでは、マウンドを回遊路から避け、しかも違和感なく回遊できること、そしてマウンドがあることが分からない風景にするための配置を考えました。皆の想いを尊重すべく、ピーター氏の原画デザインを基に、マークと主催者側で協議を繰り返し、修正を重ねました。当初のデザインから問題が生じた時に回避できるアイデアも、ショウガーデンと実際の造園では問題点も環境も違いますが、豊富な経験が的確なアドバイスを可能にします。
ショウガーデンを担当する際、使用したい植物リストを作成していても気候や流通量によって思い通りに入手できないことがあります。
英国のガーデンショーではデザインが決まると実に1年、2年前からスポンサーへの交渉、植物調達のための計画立てが始まりますが、日本ではまだそこまでの企画、準備計画が整っていないようです。実際我々は数ヵ月の短い期間で生産者との交渉を行い、「マークさんだから、そのわがまま聞いてやるよ!!」「このガーデンショウで、マークさんをリーダーに俺たちの育てている良い品物(植物達)を自慢して、見せたいもんな!!」とショウに同感して頂き、無理を聞き入れてもらいながら一つ一つの植物を調達しました。こういった大会関係者の方々の協力のおかげでガーデンショウは成り立っています。
こちらの光景でもふんだんにグリーンが使われ、配置している構造物もバランスを保っています。
ベンチや鉢、アーチなどはコンセプトに沿ったクラシックな素材を多く取り入れています。
ガーデンショウは「こんな一角が自分の庭にあったらいいな・・・」、「これ、私の庭にいいかも・・・?」そんなアイデアを持ち帰ってもらう場でもあります。
バラの花園の中にはアガパンサスの蕾、斑入りの明るいシルバーリーフ、銅葉のセイヨウハシバミなど緑色だけではないカラーリーフの面白みも取り入れました。
また、クラシックなギリシャやローマ時代の石像オーナメントやバードバスも優しくガーデンを見つめています。
このようにオールドローズがふんだんに配され、これだけのローズが揃うのもガーデンショウならではの光景です。「自然」に見えるローズガーデンですが、実際はプロのデザイナーによる計算や高い技術が詰め込まれています。そして美しいバラを始め、様々な植物やオーナメントがガーデンの中で調和した時に、なんとも言えない雰囲気を肌で感じることができるのです。
左:ピエール・ドゥ・ロンサール
左下:公式カタログ
右下:(左から)ピーター・ビールズ氏と弊社代表マーク・チャップマン
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